伊藤博之事務所の業務備忘録

業務に関連した専門情報に特化しています。主に登記の書式、先例、通達等。

内容はあくまで個人的な備忘録ですので、内容・言葉(文字)の正誤等において不正確・不鮮明な場合があります。 参考にする場合は自己責任でお願いします。 (出典等についてチェックしないまま記載している場合あり)

特例有限会社における「代表取締役の氏名抹消」の登記

1)取締役が1名となった場合

〈事例〉

取締役A

取締役B

代表取締役

の役員において、取締役Bが辞任(または死亡,etc.)

 

登記の事由  取締役の変更

       代表取締役の氏名抹消

登記すべき事項

「役員に関する事項」

「資格」取締役

「住所」○○県○○市○○町○○○○

「氏名」B

「原因年月日」平成○○年○○月○○日辞任

「役員に関する事項」

「資格」代表取締役

「氏名」A

「原因年月日」平成○○年○○月○○日取締役が1名となったため氏名抹消

 

 

2)取締役の全員が各自代表となった場合

〈事例〉

取締役A

取締役B

代表取締役

の役員において、取締役Bが代表取締役に選任

 

登記の事由  代表取締役の氏名抹消

登記すべき事項

「役員に関する事項」

「資格」代表取締役

「氏名」A

「原因年月日」平成○○年○○月○○日会社を代表しない取締役の不存在により氏名抹消

 

会計限定監査役と会社法426条1項の責任免除規定の関係

取締役等の責任免除の定款規定

取締役等の職務遂行上の任務懈怠の損害賠償責任につき、

取締役の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては取締役会の決議)

により、一定程度、責任を免除することができる旨を定款で定める

ことができる。

 ↓

この場合の責任免除規定を設定する会社は、

取締役が2名以上であり、かつ監査役設置会社であることが必要

会社法426条1項)

 

会社法2条9号より、

監査役設置会社に会計限定監査役(その監査の範囲を会計に関する

ものに限定する旨の定款の定めがある)の会社は該当しない。

 

よって、第426条第1項の責任免除の規定の(登記の)ある会社は、

監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めはできない。

(よって会計限定監査役の登記もできない)

 

監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めをする場合は、

第426条第1項の責任免除規定の廃止も併せてしなければならない。

 

その逆のパターンも同様。

会計限定監査役の会社は、第426条第1項の責任免除規定を設定できない。

 

成人した者同士の養子縁組届

(事例)

1)三波A郎さんと三波B子さんが夫婦

2)島田C助さんと島田D美さんが夫婦

  島田E夫さんがその夫婦の子

 (島田さん親子は同じ戸籍に入籍・戸籍筆頭者は島田C助)

3)島田D美さんは三波A郎さんと三波B子さんの娘

 

今回、当事者全員が成人している状況で、島田C助さんが、

三波A郎さんと三波B子さん夫婦の養子となる養子縁組(婿入り)

したいとのこと。

 

養子縁組届を提出する

・届出人…養親と養子

・届出先…養親もしくは養子の本籍地または届出人の住所地・所在地の

いずれかの市区町村

20歳以上の証人2人の署名が必要

 

養子縁組後の戸籍

1)島田C助さんにつき、養親である三波姓の新戸籍が編成される

  島田C助→三波C助(戸籍筆頭者)

2)さらに養子の配偶者である島田D美さんも夫に伴って新戸籍に入籍する

 (随従入籍という)

  姓も当然に島田D美→三波D美に変わる

3)養子の子である島田E夫さんは当然には入籍しない。

  島田C助の戸籍に残ることになる。

  なので姓が島田E夫→三波E夫に当然に変わるわけではない。

島田E夫さんを新戸籍の三波C助(戸籍筆頭者)戸籍に入籍させるには…

 別途、入籍届を提出する必要あり。

 

 

 

森林の土地の所有者届出制度

森林の土地の所有者の把握を進めるため、平成24年4月から

森林法に基づく森林の土地の所有者となった旨の届出制度が

創設された。

 

1)届出が必要な場合

個人か法人かによらず、売買契約のほか、相続、贈与、法人の

合併などにより、森林(※1)の土地を新たに取得した場合に

事後の届出として森林の土地の所有者届出が必要。

面積の基準はなし。面積が小さくても届出の対象となる。

ただし、国土利用計画法に基づく土地売買契約の届出(※2)

を提出した場合には、森林の土地の所有者届出は不要。

※1 都道府県が策定する地域森林計画の対象となっている森林

※2 国土利用計画法に基づき、次の面積以上の土地売買契約を

  したときは事後届出が必要

   市街化区域:2,000㎡ その他の都市計画区域:5,000㎡

   都市計画区域外:10,000㎡

 

2)どのように届出を行うか

所有者となった日から90日以内に、取得した土地がある市町村

の長に届出を行う。

相続の場合、財産分割がされていない場合でも、相続開始の日か

ら90日以内に、法定相続人の共有物として届出が必要。

 

3)届出書

「森林の土地の所有者届出書」の様式に記入の上、次の書類を

添付して提出。

① その森林の土地の位置を示す図面(任意の図面に大まかな

 位置を記入)

② その森林の土地の登記事項証明書(写し可)他、権利を取

 得したことがわかる書類

 

(追加)

森林所有者となった者は、立木の伐採を行う場合は市町村長

伐採及び伐採後の造林事前届出、1ha超の林地開発を行う場

合は知事の許可が必要。

(保安林では、立木の伐採等及び土地の形質の変更について、

知事の許可等が必要)

登記識別情報を提供することができない正当な理由

登記識別情報を提供することができない正当な理由

① 不通知

② 失効

③ 失念 ←「紛失」ではない

④ 管理上の支障

⑤ 円滑な取引阻害のおそれ

 

④⑤は、平成20年1月15日に追加

租税特別措置法による登録免許税の軽減規定の条項

土地の売買による所有権の移転   第72条第1項第1号

住宅用家屋の所有権の保存     第72条の2

特定認定長期優良住宅所有権保存  第74条第1項

認定炭素住宅の所有権保存     第74条の2第1項

住宅取得資金の貸付等に係る抵当権設定

 ①資金貸付に係る債権      第75条第1号

 ②資金貸付に係る債務の保証に基づく求償権 第75条第2号

 ③独立行政法人住宅支援機構の業務により金融機関から

  譲り受けた貸付債権      第75条第4号

 

登記申請の申請情報に軽減規定の条項等を正確に記載すること、と

法務局より要望あり。

遺産分割協議の後、共同相続人の一人に新たな相続が開始した場合の相続登記申請について

[要旨]

甲死亡により共同相続人A、B間において遺産分割協議の結果、

ある不動産はAの単独所有となったが、協議書を作成しない間に

Bが死亡した場合に、Bの共同相続人C、D、E作成の

「A、B間の遺産分割協議により当該不動産はAが取得した」旨の

証明書を添付して、当該不動産につきAのための相続登記申請を

することができる。

 右の場合に、CはBの妻、D、Eは未成年の子であるときは、

D、Eのために特別代理人を選任する必要はない。

 

問 甲死亡により共同相続人A、B間で、Aが甲所有のある不動産

 を相続する旨の遺産分割協議がなされたが、協議書作成前にBが

 死亡してその妻Cと未成年の子D、Eが共同相続人であるところ、

 右C、D、Eにおいて作成した「A、B間において当該不動産は

 Aが取得する旨の遺産分割協議がなされていた」旨の証明書を

 添付して、当該不動産につきAのための相続による所有権移転の

 登記申請をすることができると考えますが、いかかでしょうか。

  また、右の場合D、Eのために特別代理人を選任する必要は

 ないものと考えますが、いかがでしょうか。

答 前段、後段いずれも意見のとおりと考えます

(登記研究312号67〜68P)