伊藤博之事務所の業務備忘録

業務に関連した専門情報に特化しています。主に登記の書式、先例、通達等。

内容はあくまで個人的な備忘録ですので、内容・言葉(文字)の正誤等において不正確・不鮮明な場合があります。 参考にする場合は自己責任でお願いします。 (出典等についてチェックしないまま記載している場合あり)

利益相反取引と不動産登記(その1)

1、不動産売買における買主・売主の関係

2、担保権設定における担保権者・担保提供者の関係

→(原則)自分の会社の取締役が取引相手の会社を代表して

 契約を締結する場合には、議事録の添付必要。

 [甲会社]   売買   [乙会社]

代表取締役A     代表取締役

  取締役B        取締役C

   ↓          ↓

議事録添付:     議事録添付:

 [甲会社]   売買   [乙会社]

  取締役A     代表取締役

代表取締役B        取締役C

   ↓          ↓

議事録添付:     議事録添付:不要

 

3、担保権設定における債務者・担保提供者の関係

→(原則)利益を受ける債務者会社の代表取締役が、

 不利益を受ける担保提供会社の取締役である場合は、

 担保提供会社側の議事録添付を要する。

 

4、担保権の債務者の変更

(4-1)甲会社所有の不動産に設定された抵当権について、

 債務者が甲会社から代表取締役個人に変更

→議事録添付不要

 

(4-2)甲会社所有の不動産に設定された確定前の根抵当権

 について、債務者を甲会社から代表取締役個人に変更

→議事録添付必要

代表取締役個人が根抵当権者に対して負う債務を担保する

ことになり、甲会社にとって不利益にあたり、利益相反取引

に該当する。

 

役員全員の解任を内容とする登記申請があった場合の取扱いについて

役員全員の解任を内容とする登記申請があった場合の取扱いについて

(平成15年5月6日民商第1405号)

登記研究668号47ページ

 

会社・法人について、役員全員の解任を内容とする登記申請があった場合には、下記のとおり取り扱う。

登記申請の会社等と無関係の者が当該会社を乗っ取るために議事録等をねっ造してした虚偽の申請であるとして、紛争が生じる事案が発生しているため。

 

1.会社又は法人の役員全員の解任を内容とする変更登記の申請があった場合には、速やかに、当該会社又は法人に適宜の方法で連絡する。

(書面により連絡する場合には別紙様式)

 

2.解任されたとされる役員のうちのいずれかが申請書又は添付書類の閲覧を求めた場合には、届出印又は運転免許証の提示等の適宜の方法により、登記簿上の役員本人又はその代理人であることを確認した上、閲覧に応じて差し支えない。仮処分申請のため必要である等の事情が認められる場合には、適宜、申請書等の写しを交付することも差し支えない。

 

3.登記完了前に、解任されたとされる代表者から、当該申請に係る申請人が代表者の地位にないことを仮に定める内容の仮処分決定書等が提出された場合には、当該決定書等を本件登記申請の審査の資料とすることができる。

 

4.登記完了後に、解任されたとされる代表者から申請書にその者が代表者の地位にあること及び登記に係る代表者は代表者の地位にないことを仮に定める内容の仮処分決定書等を添付して(商業登記法(昭和38年法律第125号)第109条第2項、第107条第2項本文参照)、同法第109条第1項第2号の規定による当該登記の抹消の申請がされた場合には、他に却下事由がない限り、当該登記の抹消の登記をすることができる。

なお、取締役等の職務執行停止及び代行者選任の仮処分命令があった場合には、その旨の登記は、裁判所の嘱託によってすることとなる(民事保全法第56条)。

 

別紙
平成○○年○○月○○日
本店
商号
資格
氏名(解任された代表者) 様
○○(地方)法務局法人登記部門
役員全員の解任を内容とする登記の申請について(お知らせ)

今般、貴社(法人)について、下記のとおり役員全員の解任を内容とする登記の申請がありましたので、お知らせします。
なお、本お知らせに関するお問い合わせは、次の照会先までお願いします。
照会先 ○○市○○町○丁目○番○号
○○(地方)法務局法人登記部門
担当者 ○  ○
電話 ○○○-○○○-○○○


1 商号
2 本店
3 受付の年月日
4 新役員の資格、氏名及び住所(代表者一人のみ記載)

 

1の場合、法務局では登記申請のあった会社に通知してから

1週間程度保留期間(異議申立て等)を設ける。

 

よって、登記完了まで時間がかかることに注意!

登記申請の代理人が異なる場合の規則67条の規定の適用方法

電子申請における不動産登記規則第67条に規定される登記識別

情報の提供の省略の可否について

 

いわゆる連件申請によらない方法により、同一の不動産について

二以上の権利に関する登記の申請が電子申請によりされた場合

(同日付けで法務局に受け付けられたものに限る。)に、

下記のような内容の申請情報の提供がされたときは、

後件につき不動産登記規則第67条の規定を適用して、

登記識別情報が提供されたものとみなして差し支えない。

 

         記

(事例)

 ① 平成20年6月10日申請

   甲から乙への所有権の移転の登記(代理人A)

 ② 平成20年6月10日申請

   乙を登記義務者とする抵当権の設定の登記(代理人B)

(申請情報の内容)

(1)事例①の申請情報の内容

   本件の所有権の移転の登記と、6月10日付で後に申請される

   抵当権の設定の登記(代理人B)とは連件扱いとされたい。

(2)事例②の申請情報の内容

   本件の抵当権の設定の登記と、6月10日受付第○○号(代理人A)

   の所有権の移転の登記とは連件扱いとされたい。

 

※代理人A、代理人Bのいずれかの申請情報に上記内容が記録

 されていない場合は、事例②の申請について、登記識別情報

 の提供がされていないものとして取り扱う。

 

電子申請における不動産登記規則第67条に規定される登記識別情報の

提供の省略の可否について(回答)

(平成20年6月20日付法務省民二第1737号)より

除籍等が滅失等している場合の相続登記について(通達)

H28.3.11民二第219号通達

 

 相続による所有権の移転の登記(以下「相続登記」という。)の

申請において、相続を証する市町村長が職務上作成した情報

(不動産登記令(平成16年政令第379号)別表の22の項添付

情報欄)である除籍又は改製原戸籍(以下「除籍等」という。)の

一部が滅失等していることにより、その謄本を提供することができ

ないときは、戸籍及び残存する除籍等の謄本のほか、滅失等により

「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村の証明書

及び「他に相続人はない」旨の相続人全員による証明書(印鑑証明

書添付)の提供を要する取扱いとされています(昭和44年3月3日

付け民事甲第373号当職回答参照)。

 しかしながら、上記回答が発出されてから50年近くが経過し、

「他に相続人はない」旨の相続人全員による証明書を提供すること

が困難な事案が増加していることなどに鑑み、本日以降は、戸籍

及び残存する除籍等の謄本に加え、除籍等(明治5年式戸籍(壬申

戸籍)を除く。)の滅失等により「除籍等の謄本を交付することが

できない」旨の市町村長の証明書が提供されていれば、相続登記を

して差し支えないものとしますので、この旨貴管下登記官に周知方

お取り計らい願います。

 なお、この通達に抵触する従前の取扱いは、この通達により変更

したものと了知願います。

 

 

 

つい先日こうした案件(他に相続人はない旨の証明書添付)が

あって、この規定なんとかならないものか、と感じていたが…

 

取扱いの変更、遅すぎた気もしますが、

とりあえずこれで相続の登記、やりやすくはなりましたね。

登記書類の保存期間の改正による実際の保存期間

平成20年7月22日不動産登記規則の一部改正施行により

規則28条の保存期間が変更

 

資料の種類    起算点   保管期間

土地       閉鎖時   50年

建物       閉鎖時   30年

申請書副本、

附属書類     受付日   30年

 

改正前は10年の保管期間

 

よって、平成9年までの受付の登記申請書及びその附属書類は、

改正前の保存期間(10年)の適用により、改正前(平成20年

より前)に破棄されている場合があり。

 

秋田地方法務局能代支局の場合は、平成8年までの書類は

保管していないとのこと。

 

実情は、申請書の附属書類等を30年保存しているわけではない。