伊藤博之事務所の業務備忘録

業務に関連した専門情報に特化しています。主に登記の書式、先例、通達等。

内容はあくまで個人的な備忘録ですので、内容・言葉(文字)の正誤等において不正確・不鮮明な場合があります。 参考にする場合は自己責任でお願いします。 (出典等についてチェックしないまま記載している場合あり)

遺産分割協議の後、共同相続人の一人に新たな相続が開始した場合の相続登記申請について

[要旨]

甲死亡により共同相続人A、B間において遺産分割協議の結果、

ある不動産はAの単独所有となったが、協議書を作成しない間に

Bが死亡した場合に、Bの共同相続人C、D、E作成の

「A、B間の遺産分割協議により当該不動産はAが取得した」旨の

証明書を添付して、当該不動産につきAのための相続登記申請を

することができる。

 右の場合に、CはBの妻、D、Eは未成年の子であるときは、

D、Eのために特別代理人を選任する必要はない。

 

問 甲死亡により共同相続人A、B間で、Aが甲所有のある不動産

 を相続する旨の遺産分割協議がなされたが、協議書作成前にBが

 死亡してその妻Cと未成年の子D、Eが共同相続人であるところ、

 右C、D、Eにおいて作成した「A、B間において当該不動産は

 Aが取得する旨の遺産分割協議がなされていた」旨の証明書を

 添付して、当該不動産につきAのための相続による所有権移転の

 登記申請をすることができると考えますが、いかかでしょうか。

  また、右の場合D、Eのために特別代理人を選任する必要は

 ないものと考えますが、いかがでしょうか。

答 前段、後段いずれも意見のとおりと考えます

(登記研究312号67〜68P)

不動産登記の添付書面の援用(主に印鑑証明書の援用)

所有権保存登記の申請書に住所証明書として添付した印鑑証明書を、

後件で申請する印鑑証明書として援用することはできない。

(昭和32年6月27日民事甲第1220号民事局回答)

 

登記権利者登記義務者が異なる連件申請

甲、乙間の売買登記の申請に添付した印鑑証明書または資格証明書を

同時に申請する甲、丙間の売買登記または抵当権設定登記の申請書に

援用してさしつかえない

(昭和35年1月22日民三第81号民事第三課長心得回答)

 

今回の事例

1件目 建物A所有→AB共有(所有権一部移転)

2件目 同AB共有の建物に抵当権設定

以上の登記でA,Bの印鑑証明書が各1通しかないケース

 ↓

1件目(所有権一部移転)の添付書類として

・住所証明書(原本還付請求)←Bの印鑑証明書の写し添付(原本は2件目に添付)

・印鑑証明書        ←Aの印鑑証明書添付

2件目(抵当権設定)の添付書類として

・印鑑証明書(一部前件添付)←Bの印鑑証明書添付

もしくは

1件目(所有権一部移転)の添付書類として

・住所証明書(原本還付請求)←Bの印鑑証明書の写し添付(原本は2件目に添付)

・印鑑証明書(後件添付)

2件目(抵当権設定)の添付書類として

・印鑑証明書        ←A及びBの印鑑証明書添付

 

添付情報の援用について登記研究716号135P~に詳しい

 

登記簿に記載する本店、支店、事務所又は役員の住所等の表示

[商業登記]

登記簿に記載する本店、支店、事務所又は役員の住所は、指定都市及び

都道府県名と同一名称の市を除いては、都道府県名をも記載するのが相当

である。

申請書に右の趣旨の記載がなく、その補正ができないときでもこれのみで

却下すべきでなく、この場合は申請書のとおり記載する。

(昭32.12.24民甲第2419号)

 

(例)商業登記の会社代表者の住所

 ↓

秋田県秋田市秋田市都道府県名と同一の名称の市であるから県名省略可)

神奈川県川崎市川崎市政令指定都市であるから県名省略可)

特例有限会社の商号変更による株式会社設立の役員

特例有限会社の取締役が株式会社へ商号変更により移行した際

特例有限会社の取締役のうち、選任後の期間が、

移行後の株式会社の定款で定める任期の範囲外である場合、

 ↓

商号変更と同時に任期満了退任となる

 

移行を決議する株主総会において、移行後の役員を選任する必要あり

 

添付書面

・定款

株主総会議事録

・就任承諾書

・印鑑証明書

 →商号変更時に新しく就任した代表取締役(取締役会を設置しない会社

 にあっては取締役)については、その就任承諾書に押印した印鑑につき

 印鑑証明書を添付

  また、新しく代表取締役の選定をした株主総会議事録等の印鑑につき

 印鑑証明書を添付(ただし、従来の代表者が登記所に提出している印鑑

 を議事録に押印している場合は不要)

 

ケース

(有限会社時)取締役A、B、C 代表取締役

 ↓

(株式会社移行後)取締役A、B、C 代表取締役Bで取締役会設置しない

上記ケースの印鑑証明書の添付の要否

取締役が全員再任なので就任承諾書に押印した印鑑の印鑑証明書は不要。

さらに選定した株主総会議事録にAが有限会社の届出印で押印してあれば、

株主総会議事録に添付する印鑑証明書も不要。

結果、申請書に添付する添付書類としては印鑑証明書は不要。

ただし、印鑑届に添付するBの個人の印鑑証明書は1通必要。  

 

 

連帯債務者の一人の死亡に伴う抵当権変更登記(その2)

その2

相続人の1人が単独で抵当権付債務を引き受ける遺産分割協議をし、

それについて抵当権者(金融機関)が承諾した場合

 

ケース

不動産の所有権はA・B共有からAが死亡し、B単独所有へ

① 連帯債務者A・B→Aが死亡

② 連帯債務者Aの債務について共同相続人B・C・Dで遺産分割協議

 →連帯債務者B

③ ②につき抵当権者が承諾

 

目的 ○番抵当権変更

原因 成27年4月1日連帯債務者Aの相続

   ↑Aの死亡した日

変更後の事項

   連帯債務者 (住所)B

権利者(本店)株式会社X銀行(←抵当権者)

       代表取締役

義務者(住所)B

添付書類  登記原因証明情報 登記識別情報 代理権限証明情報

      資格証明情報

※印鑑証明書は添付不要(昭30.5.30民甲1123号回答)

 

共同相続人の1人が抵当権付債務を引き受けた場合において、

その引受けが遺産分割によるものであるときは、

共同相続人全員を債務者とする変更の登記をすることなく、

直接、共同相続人の1人を債務者とする変更の登記を申請

することができる

(昭33・5・10民甲964号通達)

 

連帯債務者の一人の死亡に伴う抵当権変更登記(その1)

その1

共同相続人全員が連帯債務を承継した後、共同相続人の1人が「債務引受契約」

によって他の相続人の債務を引き受ける場合

 

ケース

不動産の所有権はA・B共有からAが死亡し、B単独所有へ

① 連帯債務者A・B→Aが死亡

② 連帯債務者Aの相続→連帯債務者B・C・D

③ 連帯債務者C・の免責的債務引受→連帯債務者B

 

(1/2)

目的 ○番抵当権変更

原因 平成27年4月1日連帯債務者Aの相続

変更後の事項

   連帯債務者

   (住所)B

   (住所)C

   (住所)D

権利者(本店)株式会社X銀行(←抵当権者)

       代表取締役

義務者(住所)B

添付書類  登記原因証明情報 登記識別情報 代理権限証明情報

      資格証明情報

※印鑑証明書は添付不要(昭30.5.30民甲1123号回答)

 

(2/2)

目的 ○番抵当権変更

原因 平成27年5月1日連帯債務者C、Dの債務引受

   ↑債務引受契約が成立した日

変更後の事項

   連帯債務者 (住所)B

権利者(本店)株式会社X銀行(←抵当権者)

       代表取締役

義務者(住所)B

添付書類  登記原因証明情報 登記識別情報 代理権限証明情報

      資格証明情報

※印鑑証明書は添付不要(昭30.5.30民甲1123号回答)

  

募集株式が譲渡制限株式である場合の総数引受契約(H27.5.1~施行)

1 募集株式が譲渡制限株式である場合の総数引受契約に関する改正

  募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締

 結する場合において、当該募集株式が譲渡制限株式であるときは、株式

 会社は、株主総会の特別決議(取締役会設置会社にあっては、取締役会

 の決議)によって、当該契約の承認を受けなければならないとされた

 (法205条第2項、第309条第2項第5号)。ただし、定款に別段

 の定めがある場合には、当該定款の定めによることとされた

 (法第205条第2項ただし書)

 

2 総数引受契約により譲渡制限株式を発行した場合における募集株式の

 発行による変更の登記の申請書に添付すべき書面

  1の場合には、従前の添付書面のほか、株主総会の議事録取締役会

 設置会社にあっては、取締役会議事録)又は定款及び定款の定めに応じ

 た機関によって承認があったことを証する書面(商登法第46条第1項

 及び第2項に規定するものに限る。)を添付しなければならない(同条

 第1項、第2項、商登規第61条第1項)